- 2013年5月 6日 13:20
箱根・宮ノ下の富士屋ホテル。私は中学生のころ
ここに家族旅行で来て泊ったことがありました。その時
日本人は少数でお客のほとんどが外国人だった記憶が
残っていました。(今は逆で外国人は2,3組だけです)
それから40数年の時が流れ、この連休中にやっと2度目の
宿泊が実現しました。エントランスのある本館は明治24年築で
フロントロビー、客室に至るまで100年前の空気がそのまま
保存されていて、現代の日本ではまず味わえない雰囲気です。
私は以前泊ったときのリーフレットを持っていて
それにはホテルのレジスターブックには世界各国
からのお客さんの名前が記されている旨の記述があります。
その時の私の家族の名前も載っているのではとコンシェルジュの
織田さんに資料室にある昭和42~43年の8月分を調べて
もらいましたが見当たりません。そのブックを実際に
見せてもらったらほとんどが外国人の署名でした。
これは宿泊カードとは別のサイン帳なので、全員が書く訳では
ありませんが、外国人が大半という私の記憶は裏付けられました。
リーフレットには私の母の字で「予約係 秋山様」と書かれていて
織田さんに尋ねると「それは退職した秋山元副社長でしょう」との答え。
入社31年という織田さんにどうして昔は外国人が大半だったか
聞くと当時外国人向けのホテルは、横浜のホテルニューグランド
日光金谷ホテルや軽井沢万平ホテルなど限られていたから
ではないか、とのことでした。
明治11年に開業後、一時は道路向かいの奈良屋旅館と協定を結び
奈良屋旅館は日本人専用、富士屋ホテルは外国人専用だった時期も
ありましたが、現在は半ば"日本人専用"になっているのは
時代の流れでしょうか。
奈良屋旅館は残念ながら2001年に閉館され、現在はエクシブの
リゾート施設になっていますが、その原因を調べてみたら相続税と
財産分与だった、とのことでこれには驚きました。
富士屋ホテルも実は創業家の山口一族に争いが起こり
昭和40年頃に国際興業の傘下に入ったのです。それ故明治の
建物が残り、私たちが今でも宿泊できるとも言えるのです。
個人が古い良い伝統を承継できない今の税制は、オーバーに言えば
貴重な日本文化を消滅させるもので、残念と言うしかありません。