- 2010年5月12日 16:25
日本橋の旧東急デパート(現在は「コレド日本橋」)の
向かいに「榛原(はいばら)」という和洋紙や紙製品を
扱っている老舗があります。
創業は文化三年(1806年)と古く、明治時代には榛原が
初めて和紙を外国に輸出し、また洋紙を輸入したそうです。
1800年後半のウィーン万博やパリ万博にも和紙を出品し
榛原製和紙は、イギリスやフランスの美術館にも今も保存され
またこの締結により戦争状態が正式に終了したとされる1951年の
サンフランシスコ講和条約に使用された巻紙は榛原製だったそうです。
この8階のギャラリーでは北斎の復刻版画展が開催中でした。
北斎や広重などの浮世絵で世界的に有名な江戸時代の木版画は
幕末から明治にかけてそのピークを迎えたあと衰退していきます。
いま東京都では失われつつある41の伝統技術工芸を選び
「東京都伝統工芸品」の指定をしていますが、江戸の木版画は
2007年に経済産業省からも国の伝統的工芸品に指定されています。
木版画は原画を描く「絵師」、それを元に木版を彫る「彫り師」
木版に絵具を塗って摺る「摺り師」の三者で初めて成り立ち
会場では北斎の有名な「赤富士」を摺り師が実演して
江戸時代の素晴しい浮世絵を現代に蘇らせていました。
展示のなかに私は日本各地の滝を題材にした全8図の
「諸国瀧廻り」という復刻シリーズを見つけました。
このさまざまに流れ落ちる滝の表情はどうでしょう。
構図の多彩さや強調された曲線や直線の抽象的な表現など
北斎の天才、独創性をあらためて感じました。
江戸期に制作したものではなくても、当時の伝統技法で
摺りあがった北斎の木版画が、店員に聞いてみると
1万円ちょっとで手に入るのです。これは安い!
そのうちに欲しいなと思っていたら「残りはあと1部です」
と言われて結局この8枚の連作を買ってしまいました。
(社長)