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スタッフブログ

大海にこぎだす船乗りの仕事は常に危険と隣り合わせだ。
昔から「板子一枚下は地獄」という言葉で伝えられてきた。
私たちが日々豊かな海の幸を味わえるのも
命がけの仕事のおかげである。

それだけに船乗りは強い絆(きずな)で結ばれている。
漁船の遭難事故の都度、行方不明の仲間や
家族を気遣う漁師たちの思いやりは心にしみる。
昨日、八丈島近海で連絡が途絶えていたキンメダイはえ縄漁船
「第一幸福丸」が見つかった。
4日ぶりに3人救出という奇跡的な朗報と船長の悲報に
海の男たちの胸中は喜びと悲しみが交錯したのではないか。 

それにしても、転覆した漁船の船内から良くぞ生還してくれた、と思う。
3人は、救助のへりから降りた後、八丈島で待機していた救急車まで
歩いたそうだ。脱水症状はあるが、健康状態に問題はないという。
転覆した船内のわずかな空間で、救出を信じて
ひたすら待ち続けていたのだろう。本当によかった。

一方で、亡くなった船長の家族や関係者の悲しみを思う。
佐賀県から駆けつけた母親が、「息子が船員を守り
全員無事に帰すと信じている。そういう息子に育てたつもり」
と気丈に語っていたことを思い出す。

船が連絡を絶つ直前、幼馴染の同級生は
船長と船舶電話で話をしていたそうだ。
話の中で、船長は新しい船を調達したい、と夢を膨らませていたという。
それも、かなわない夢となった。残念だ。

しかし、残る4人の乗務員は行方不明のままである。
今も海上保安庁や僚船など、約束の固い海の男たちが
全力を挙げて捜索している。何としても生還を、と願っている。

(M.N)

手助け

チンパンジーは見返りがなくても
仲間の手助けをするという。
京都大学の霊長類研究所などが行った研究成果が
テレビで紹介された。 

ブースにチンパンジーを一匹ずつ入れ
片方のブース前にジュース、もう一方の前に杖を置く。
ジュースが飲みたいチンパンジーは
隣の仲間に杖を取ってくれるよう盛んに促した。

仲間は「仕方がないなあ」といった様子で杖を取り
窓越しに手渡した。その杖でジュースを手繰り寄せ
美味そうに飲み干すという映像だ。
協力への返礼がないだけで、我々の日常と変わらぬ光景である。
ペアを変えても大方が同様に動いたそうだから
見返りなしの「利他行動」は半ば常識化しているのだろう。

一見気ままな暮らしに見えながら
実は我々の想像以上に繊細な社会性を
身につけているのかもしれない。
厳しい環境を生き抜くには利己を抑制しないと群れは持たない。
共同体が重層化した人間社会ならなおさらである。
彼らの何気ない仕草からあらためて
無償の援助の尊さを教えられた。

ただ彼らの行動のほとんどは相手の求めに応じたもので、
自発的な援助は人間社会特有のものだとか。
なるほど気を利かして杖を差し出すチンパンジーがいたら気色悪い。

自然界では求めに応じた手助けが無駄なく効果的で
過ぎたるはお節介に映るようだ。
95兆円に膨らんだ来年度当初予算概算要求は
国民の求めと与党の思いが混在し、その評価は何とも微妙である。

(M.N)                                                                                  

 

音羽会館にて

目の前にいた年配の女性2人組が、すっとんきょうな声を上げた。
「この家建てたの関東大震災の翌年ですって」 
「信じられないわね。本当に。ものが違うって感じ」。
東京の新名所、鳩山会館での話だ。                                        

鳩山由紀夫首相の誕生で
祖父の一郎元首相が建てた私邸が脚光を浴びている。
地上3階、地下1階、延べ床面約240坪の通称「音羽御殿」には
平日にもかかわらず観光バスが何台も乗りつけ、観光客でにぎわっている。

門から洋館に至るつづら折の坂道からして
いかにもお金持ちのお屋敷。屋根にはハトの飾り
窓にはハトをデザインしたステンドグラスが入っている。
まるで文化財だ。
芝生の敷かれた広い庭には色とりどりのバラ。
一郎元首相が愛した黄色い「ピース」も咲いている。                                               

第2応接室には一郎元首相が愛用したいすが残っていた。
ここで政治家・三木武吉らと歴史を刻んだのだろうか。
そんな祖父を見ながら、由紀夫少年は
弟(邦夫氏)とチョウを追いかけたのだろうか。                                  

とにかく豪勢な家と家柄に圧倒されながら
観光客は無料のお茶に列をなし、英国風サンルームから庭を眺める。
確かにもの違うなと思いながら同じように休憩していると
先の声の大きな2人組が近くのいすに座っていた。

(M.N)

若手の台頭

ロンドンで開かれた体操世界選手権で
内村航平さんが個人総合金メタル。若干20歳だ。
床運動、あん馬、つり輪、跳馬、平行棒、鉄棒。
この6種目をすべて演技し優勝するには、わずかなミスも命取りになる。
人間の能力の限界に近い技をこなし
ぴたりと着地まで決めた瞬間、選ばれし者となる。
体操の男子個人総合とは、かくも難しい競技だ。

内村選手は昨年の北京五輪で銀メダリストとなり
クールな笑顔とともに一躍名をはせた。
鮮烈な五輪デビューが偶然でなかったことも示した今回の金メダルは
五輪・世界選手権を通じ日本勢最年少の快挙だった。

今度の大会では、4種目で競う女子個人総合でも
ヒロインが生まれた。17歳の鶴見虹子(こうこ)選手。
こちらは池田啓子さん以来、43年ぶり、2人目の銅メダルだ。
小柄な体にみなぎる躍動感は、種目別の段違い平行棒で銀も引き寄せた。                                                            
 
難度を求める流れにあって、体操日本の伝統は美しさだろう。
これは内村選手らも受け継ぐ。
次はロンドン五輪。選ばれし者へ夢は膨らむ。

栄光が持つ明と暗。逆境をはね返す力強い歩み。
そういえばゴルフの石川遼選手はまだ18歳だが
ここ1年の活躍ぶりは目をみはるばかりだ。
各界で進む「チェンジ」は楽しい。

(M.N)

路面電車

路面電車はなぜチンチン電車と呼ばれるのだろうか。
車掌さんと運転士さんがかって連絡に使っていた
ベルに由来するという説が有力だそうだ。

チンと1回鳴らせば「降りる人がいるから停車」の意味。
2回鳴らすと「乗降がすんだので発車してもよい」となる。
だが電車の廃止に伴い、ベルは次第に消えていった。

東京にも路面電車が走る。
地下鉄やJRに負けずに都電で唯一生き残った荒川線は
今もベルが健在だ。
ワンマン化した際、惜しむ声にこたえて
発車時に自動的に鳴る装置を取り付けた。
遊び心ある計らいに拍手を送りたくなる。

学生街・早稲田と荒川区三ノ輪橋間12,2キロを結ぶ都電に乗ると
お年寄りや子供連れの女性が多い。乗り降りのとき
運転士は「慌てなくてもいいですよ」と何度も声を掛ける。
ガタンゴトンのゆったりリズムと、ぬくもりの空間はやはり心地よい。

電車が環境に優しい乗り物として見直される中
一層の普及を期待する人は
「チンチン」 と発車を促したいに違いない。

(M.N)

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