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美術館

らんまんの桜色に代わって、若葉が枝々に広がり、
空を大きく覆う。萌(も)え出る多彩な新緑に吹く風が
染まり、心地良い。初夏のすがすがしさ、軽やかさ。

移ろう季節の中、燕子花(かきつばた)が見ごろを迎えていた。
訪ねたのは、コレクション展を開催中の南青山の根津美術館。
尾形光琳筆の国宝「燕子花図屏風」を中心に館蔵品が展示され、
日本庭園にも燕子花が咲き競う。

金地に群青と緑青のみでリズミカルに描かれた六曲一双の屏風は、
右隻と左隻の構成や微妙な濃淡の違いを楽しめる。
鑑賞後、起伏のある庭園を散策しながら都会の一角とは思えない
豊かな自然も満喫できた。

当初、「燕子花図」と米メトロポリタン美術館所蔵「八橋図」の
光琳による二つの金屏風が並ぶ予定だったが、震災の影響で
来春に延期になった。残念な思いをした人は多いはずだ。

地震と福島第1原発事故後、欧米から借りる巨匠の優品を
目玉に据えた企画展の開催中止や展示内容の変更が各美術館で
相次いでいる。海外の関係者が、日本への作品貸し出しに
難色を示したためだった。

「燕子花図」と「八橋図」は同じ伊勢物語を題材とし、
人物の描写こそないものの東国に下る途中の在原業平が都をしのんで
歌を詠む場面。大正時代、日本とアメリカに離れてから2作品は
一度も出会うことがなかった。100年ぶりの再会を待つ光琳画が
郷愁を誘った。

(M.N)

母の日

「母ありて/われかなし/母ありて/われうれし/(中略)
母ありて/われあたたかなり」。詩人サトウハチローが残した
詩のうち3千は母に関するものだ。

東日本大震災で被害のあった岩手県北上市は14年前から
サトウハチロー記念「おかあさんの詩」コンクールを
実施しているそうだ。寄せられた作品には母への思いが詰まる。

岩手県の幼稚園児の詩。「いちばんめに好きなのは
とうさんとにいちゃん/でもね、かあさんのことは/もっと大すきだから
/ゼロばんめ/ゼロだからいちより/ずっとぼくにちかいんだよ」

母の字は女性が子を抱く姿をかたどったとされる。
また母語、母国、母校など、母には源という意味もある。
サトーハチローと園児の詩には、命の源である母を慈しむ気持ちが共通する。

働く母親は外で仕事、家で家事・子育てに追われ、専業主婦は
一日中子どもと向き合う。「トイレでも/一人になれない/母親業」
新読書社「育児・子育て川柳」)。家事・育児に追われ、
家族の感謝を十分かみしめる余裕がないのも今どきの母親の一面か。

今年も6月から作品を募る北上市。被災地ではまだ作詞どころではない
地域もあるかもしれない。母親への感謝を気軽に詩につづる日常を
一日も早く取り戻してほしい。8日は母の日だった。各家庭で
素直に母親への感謝を伝えたい。「お母さん、ありがとう」の一言とともに。
孫に母親のありがたさを話してやったのだが、孫からの返事は
「ジィジィはバァバァを大切にしているの」だった。

(M.N)

省エネの知恵

夏場を中心に電力需要のピークをいかにカットして
いくかがこれからの大きなテーマになっている。
東京電力や東北電力の管内の話ではあるが、
全国でよそ事にしてはいけないことだろう。

省エネルギーの取り組みは今回の震災前から、
日本の社会に求められてきた環境問題上の大命題である。
脱化石燃料、消費電力の抑制は生活のあり方を問い掛けた
世界的ニーズでもある。

政府が示す目標は使用電力の15%カット。企業では
サマータイムの導入や工場の稼働時間の分散化、夏季休暇の
長期化などを検討している。一般家庭でも家電の使い方を見直
すなど、電力使用の削減が求められる。

国内の生産性を低下させずに省エネを成功させる取り組みは、
東日本だけでなく全国的なスタンダードモデルにもなり得よう。
これから試行されていく非常時の知恵をその後のローコスト社会、
エコロジー社会の実現に向けた礎としたい。

部屋を冷やすエアコンの設定温度を上げる。無駄な電灯の
スイッチを切る。省エネタイプの家電に切り替える。
夏場を軽装で過ごすクールビズを徹底する。打ち水をする。
すぐできる実践例も多い。

新旧の省エネの知恵を集積し一人一人が努力する。
人ごとにしないことが日本復興の推進力になるはず
であると思う。

(M.N)

石炭の世紀

21世紀は石炭の世紀だった。
と言われてもぴんと来ないかもしれない。
エネルギーの主軸を石油に譲って久しい。
燃やせば温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を
大量に出すから悪玉扱いもされた。

が、世界は「黒いダイヤ」の誘惑から解放されていない。
米国や中国の大量消費は言わずもがな。
太陽光や風力に熱心なドイツでさえ発電の5割近くが石炭。
何せ石油や天然ガスよりも価格が安い。

埋蔵量が豊富、産地が広範、地政の影響も低い。
ゆえに石油ショック以来、電源構成の影の主役だ。
人ごとではない。日本の電力会社が近年、最も精を出したのは
石炭火力発電所の建設だ。

「原発が増えると火電が増える」という言葉があるのだそうだ。
原発をつくれば、日常の出力調整と非常時に備える別電源が
必要になる。京都議定書後の10年で、石炭家電の総出力は
1200万キロワット以上も増えたようだ。
もはや石炭隠しのための原発であると思われる。

石炭の世紀とは、石炭とのつきあい方を考えなくてはならない。
日本はCO2排出を抑える石炭ガス化複合発電の技術力こそあれ、
実用化では後れをとる。原発一辺倒で進んだツケかもしれない。

福島原発事故を受け、再び脱原発に向かったドイツは、
火電が出すCO2を地下埋設する研究を本格化するそうだ。
環境負荷の懸念はあるが、使用済み核燃料の地層処分よりはまし。
そう思わされるのも、また原発の罪になるのだろうか。

(M.N)

心温まる力を与える行動

「 日本の強さは団結力」「一人じゃない。みんながいる」「頑張ろう日本」。
東日本大震災を機にテレビなどで有名人が語る被災地への応援メッセージ。
ここ数週間は故坂本九さんの名曲が流れ、被災地はもとより日本全体を
励ますようなCMにはおのずとパワーがみなぎってくる。

「頑張ってください」。被災した人たちには確かにそう言いたい。
そしてエールは送り続けなければならない。だが大津波で家と家族を失い、
住む場所さえままならない過酷な状況下の被災者に、
果たしてこの言葉を掛けられるだろうか。自問自答している。

石原プロモーションの渡哲也さんや舘ひろしさんらが
被災地の宮城県石巻市で1週間にわたって大がかりな炊き出しを行った。
俳優、スタッフ総勢100人は最終日の20日まで風呂に入らず、寝袋で
生活する様子がテレビで流れていた。被災者と連帯感を強め、
少しでもあすの活力になればーとの思いから同じ境遇に身を置いたのだろう。
そして親身になって話を聞いた。

「心が温まりました」。やはり力強い行動こそが一番のぬくもりだと感じた。
なかなかできるものではない。「頑張って」はその後でいいように
生意気ながら思った。石原プロモーションの方たちに頭が下がり、涙した。


(M.N)

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