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花火

  • 2011年8月12日 07:54

打ち上げ花火の季節である。芯物花火は二重三重の輪を描く。
光の粒が広がる「牡丹(ぼたん)」、光が放射する「菊」、
しだれる「柳」。上昇中に枝を出す「昇り曲導(きょくどう)」
があるかと思えば、ふいにマスコットの顔や土星のような形が
ぽっかりと夜空に浮かんだりする。

鮮やかな青やピンクなど、色彩も年々豊かになるようだ。
緑はバリウム、赤はストロンチウム、青はナトリウム、金は
チタニウムなど、金属元素の炎色反応を駆使した光の芸術が美しい。

一説によると、花火は江戸初期の「駿府政事録」に史料として
初めて登場している。駿府城を表敬した外国人の献上品に花火があり、
徳川家康公が慶長18年(1613年)8月、城内二の丸で
花火を見たと伝えられている。

打ち上げ花火は川遊びや水の犠牲者の供養から始まったと言われ、
新旧の盆の月に集中している。今夏は多くの開催地が、
東日本大震災の犠牲者を供養し、併せて被害地復興への祈りを
込めたという。
 東北は昨今、熱い思いのこもる大きな祭りのうねりの中にあった。
青森のねぶた、秋田竿燈、山形花笠、仙台七夕など華やかな伝統行事が
相次いだ。2万人を超す大地震の死者行方不明者をしのび、
復旧・復興への不安をかき消すような夏祭りだった。
身近な花火にもまして、遠方の花火が心に染みる夏だ。


国家的宿題

8月、夏本番。児童・生徒たちの夏休みも真っ盛りだ。
海へ山へプールへ、もいいが、宿題も少しずつやっておいた
ほうがいい。いつでもできると思っていたら、あとが大変だ。

自由研究のテーマは今年はいくつもありそうだ。
地震や津波について考えてみるのもいい。日本は大昔から
自然災害とたたかってきた。節電についても考えてみたい。
電気がなくては暮らしていけないのだから。

この夏は円高の問題も加わった。大変だ大変だ、という
雰囲気になっている。円高問題は日本にとっては長年の宿題
だったはずだ。円高が進んでも心配しなくていい国になるには
どうしたらいいか、という宿題を出されて30年近くになる。

「内需主導型への転換」という答えは最初から示され、
具体策を示すのが宿題だった。円高になると外国からモノを
安く買える。それを国の前進力にする道筋だ。政治が宿題を
サボってきたから「大変だ」を繰り返すだけ。

慣れ親しんだ外需(輸出)主導型経済は、円高が進むほど
骨格がきしむ。今回の超円高は輸出産業の生産の海外移転を
加速させるだろう。ただでさえ産業界には電力の供給不安を
背景に日本脱出を考える空気が出始めていた。

長年の宿題はともかく、突然突きつけられた宿題は
こなさないと、日本経済はいよいよ暗い。電力不安は
どうすれば解消できるのか。国家的宿題の答えとそこに至る
道筋を、政府・与党は夏休み抜きで見つけなければならない。
頼みますよ。


記憶遺産

平泉の文化遺産、小笠原諸島の自然遺産に続いて、
記憶遺産に筑豊の炭坑の様子を描いた山本作兵衛さんの絵が
選ばれた。まさに世界遺産の3連発。震災以降、
暗雲立ち込める日本列島に世界遺産のニュースは、
なでしこジャパンとともに久々に明るい話題が振りまかれた。

その「記憶遺産」だが、大方の人にとって始めて耳にする
言葉だったのではないか。何しろ今回初めて日本のものが
選ばれたのだ。記憶遺産自体は1992年に設けられた制度で、
これまでにグーテンベルクの聖書やアンネの日記などが登録されている。

これに伍して選ばれた山本作品は半世紀自分が働いた
「ヤマの生活を子や孫に残したい」との一心から60歳代になって
絵筆をとられたようだ。素朴で力強い筆遣いと余白にびっしり
書き込まれた文章が、炭鉱の暮らしを鮮明に伝え、まさに
「遺産」にふさわしい。

山本作品とはかなり趣を異にするが、やはり鮮やかに
時代や世相を伝えるものだとあらためて感じたのが、絵はがきだ。
最近出版された「東京今昔旅の案内帖」(学研ビジュアル新書)は、
明治以降の彩色絵はがきや写真と現在の写真を並べて
名所の今昔をたどるという趣向だ。

例えば、「浅草十二階」として知られ関東大震災で崩壊した凌雲閣が
ひょうたん池越しにそびえる絵はがきは、江戸と近代が混在するさまを
伝えている。まさに身近な"記憶遺産"と思う。同じ著者による
大阪版も出ていて、変貌ぶりを机上で歴史散歩できる。


高速鉄道

中国で23日夜、高速鉄道の追突事故で多数の乗客が
死傷したと報道された。追突された車両が
20~30メートルの高架橋から転落したらしい。
中国版新幹線では最悪の事故だ。日本は1964年に
東海道新幹線開業以来、死亡事故ゼロを続けている。

中国では高速鉄道網が急速に拡大している。昨年末で
営業距離8358キロは世界最長となった。
2020年末に約2倍の1万6000キロを目指して工事が進行中だ。
6月30日には過去最大となる2兆7500億円を投じた
北京ー上海間(1318キロ)が開業した。従来の10時間の半分に
短縮されたようだ。

威信をかけた国家プロジェクトだけに鼻息も荒く、
国内建設ばかりか、南米や中東に技術輸出の攻撃をかけている。
ところが後発だけに日本や独仏の技術をベースにしたのは
世界の常識で、特許紛争に発展しかねないと懸念されていた。
そこに今回の事故発生だ。各国は事後を注目している。

中国は去年から始まった第12次5カ年計画で「強国」から「富民」への
方針転換を表明した。一党独裁の制約下という前提付きながら
多少スタンスを変えようという姿勢を示した。死傷者の救済・
支援と同時に原因究明と対策をどう進めるか。
安心・安全の優先が富民と無関係ではないと思う。

世界遺産で「浄土」に脚光

極楽浄土の存在を信じ、阿弥陀(あみだ)仏にすがって
浄土に導かれることを願う浄土思想。未法の世が迫ると
人々が不安を募らせ始めた平安時代後期から急速に広まった。

人々は、説法や絵図で示された浄土の様子をひたすら
思い描きながら、念仏を唱えた。浄土を鮮明にイメージするほど
浄土に近づけると信じたからだ。

権勢を誇る者は、浄土をこの世に現出させようと試みた。
その一つが、京都・宇治の平等院鳳凰堂だ。「極楽が疑わしければ、
宇治の御寺を見ればよい」とまで言われたほどの壮麗さである。

浄土現出の試みは東北の地でも行われた。3代100年にわたって
平和と繁栄を謳歌(おうか)した奥州藤原氏。その初代、清衛が
平泉に建てた中尊寺金色堂は黄金に輝いてまぶしく、浄土を見た
心地がする。浄土現出のコンセプトで統一された一帯の寺院群には、
平和で苦しみのない理想郷をこの世で見てみたいという。
当地の人々の切なる願いが込められている。

岩手県平泉町の文化遺産郡の世界文化遺産登録が正式決定した。
東日本大地震で苦しむ現地の人々にとって、復興への光明となる
朗報だ。

世界遺産委員会は浄土思想に深い理解を寄せて決定に踏み切った
という。平和な理想郷を求める心は、国や宗教の違いを超えて
世界に共通する。津波が(ツナミ)として世界共通語になったように、
浄土も(ジョウド)として世界中に語られる日が来るかもしれない。

(M.N)


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