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百寿

「長生きは人に恩返しするチャンス。だから、
自分で罪深いと思っている人は、うんと長生きしてくださいよ」。
数年前、講演でそんな風に笑わせていた聖路加国際病院理事長の
日野原重明さん。10月4日に100歳の誕生日を迎えられた。

90歳の卒寿、99歳の白寿、100歳の祝いは耳慣れないが、
上寿や紀寿、百寿と呼ぶらしい。日本で今年、新たに
100歳になる人は、何と2万4952人。「人生七十古来稀なり」
は既に遠く、喜ばしい限りだ。

日野原さんは今も講演で全国を飛び回り、執筆や医師の活動にも忙しい。
講演の予約は数年先まで詰まっているそうだ。自ら企画した
ミュージカル「葉っぱのフレディ」は12年目を迎え、今月の
特別講演でダンスを披露される予定ときく。

長生きの秘訣は一般に「食事、運動、生きがい」。日野原さんは
病院の6階まで毎朝階段を上がり、高齢患者の手を握って
「私より若いのに、先に逝っちゃ駄目だよ」と笑わせ、励まして
いられるそうだ。見習いたいが、ちょっと超人的すぎる。

医療者に一番求められるのは「知識や技術より、患者の心に
上手にタッチする力」らしい。その言葉通りの柔和な笑顔。
いつまでも元気で、いつまでも現役であってほしいと、
願わずにはいられない。

(M.N)

大相撲界

国技の大相撲界に新たな時代が到来する予感がする。
共に横綱白鵬を破った琴奨菊、稀勢の里の奮闘に
沸いた秋場所を見てそう思った。

近年の大相撲は外国人力士の活躍ばかりが目立っていた。
秋場所は横綱、大関からついに日本人力士の名が消えた。
2006年初場所の栃東以降、日本人力士の優勝はない。

幕内力士42人のうち外国人が38%を占めるまでになった。
外国人がいてこその醍醐味もあり、否定はしないが、
日本人力士が負けず劣らず勇躍する土俵でないと興味は半減する。

ところが、今場所は趣が違った。20回目の優勝を果たし、
大横綱の風格が漂う白鵬も63連勝した時のような圧倒的な
強さはなかった。関脇以下に初めて連敗したのもその証左だ。
日本人として4年ぶりとなる待望の大関琴奨菊が誕生した。
そして来場所は稀勢の里が大関とりに挑む。後には生きのいい
若手力士も控えている。

賭博や八百長など不祥事続きの影響で人気に陰りが
みられた大相撲だが、復活の兆しが感じられた。
そして第3代若乃花以来の日本人横綱誕生も
そんなに遠くない気がしてきた。

(M.N)

渚にて

  • 2011年9月29日 12:41

海辺だけではなくて、宇宙にも「渚」があるそうだ。
連休中の日曜日にNHKが放送した国際宇宙ステーション
(ISS)からの生中継で知った。

地上数十キロから数百キロの高さだ。青空が漆黒の闇へと
溶け込む高度域を番組では「宇宙の渚」と呼んでいた。
そこでは、オーロラや放電閃光(せんこう)など地球と宇宙が
さまざまな物理現象を交わしている。ISS滞在中の宇宙旅行士
古川聡さんが撮影した超高感度カメラの映像は見応えがあった。

宇宙から見て「渚の底」にある夜の日本列島は、地図の形そのままに
まばゆい光で緑取られていた。やはり宇宙に長期滞在した宇宙飛行士
若田光一さんは、地球の夜景から「いかに人間が大量の電気
エネルギーを使っているかが分かる」と語っていた。

英国人作家ネビル・シュートのSF小説「渚にて」(1957年)は
核戦争でわずかに生き残った原子力潜水艦の乗組員の苦悩を描く。
冷戦は終わっても、地上にはなお大量の核兵器が残り、原発事故に
おびえる日々がある。海中ではなく、宇宙にいる間に故郷を喪失する
宇宙飛行士の物語も絵空事とは言い切れないだろう。

月曜日に作家大江健三郎さんらの呼びかけで開かれた脱原発集会は、
約6万人(主催者発表)の参加者が東京・明治公園を埋めたと
報道されていた。上空ヘリが撮影した人の波は、「渚の底」の
暮らしを変えていく大きなうねりのように見えた。

(M.N)

 

除染土壌

今夏、ヒマワリを育てて種子を福島へ 贈ろうという運動が
全国的に展開された。土壌の放射性物質を吸収しやすいとの触れ込み
だったが、効果は期待外れで関係者を落胆させる結果となった。

農地除染の実証試験を行った農林水産省によると、ヒマワリなど
植物によるセシウム除去効果は小さいことが分かった。
速効性が求められる現状では普及には適さないとの結論だ。

福島県飯館村で栽培したヒマワリの茎や根を調べたところ、
土壌1平方メートル当たりに含まれるセシウムの2千分の1しか
吸収していなかった。植物除染では気の遠くなるような年月が
必要となってしまう。

除染には表土除去が最も効果的で、4センチ削り取るだけで
セシウム濃度は4分の1に低下するという。
森口祐一・東京大教授の試算では、除染が必要な地域は福島県を中心に
2千平方キロあり、すべての表土を5センチ削り取るとすると
体積は1億立方メートルに達する。

東京ドーム80個分に相当する汚染土壌の安全な保管場所など
どこにもない。土壌のセシウムを分離することは技術的に難しく、
現状ではコンクリート製容器に密閉するしかない。

自治体ではごみ焼却施設から出る汚染焼却灰の処分にも困っている。
除染必要地域の7割は森林、残りが農地と市街地。用途に応じた
除染方法、費用負担など国が早急に示すことが必要と思うのだが。

(M.N)

盤上の海

棋士の羽生善治さんは、将棋盤の前に座って考え始めると、
<ほんとうになにか海の中に潜っていくような感じになる>
といわれる。潜っていく感じが深ければ深いほど、
時間があっという間に流れ、意識がなくなっていくような
感覚になるそうだ。それは、将棋というジャンルを超え、
創造の世界に生きる究極の才能が味わう没我の境地なのだろうか。

「盤上の海」は、縦横9マスと狭くても、底知れない深さを持つ。
あの故大山泰晴15世名人に並ぶ通算80期のタイトル獲得
という偉業は、深海に幾度ともなく身を沈めて、つかみ取ったものだ。

当時史上最年少の19歳3ヶ月で初タイトルを獲得して以来、
誰もなしえなかった全7冠を制覇するなど常に棋界の先頭にいられる。
眼鏡の好青年の印象が強い天才棋士も、はや40歳。髪には白い
ものもさす。

「若い人たちが台頭しており、一局勝つことが大変だと
しみじみ実感することが多い」。新世代を代表する24歳の
広瀬章人王位を下した後の記者会見で語った言葉は本音だろう。

『海の深さの中に入っていく』。「ほんとうに面白い言葉だなあ」
と思った。これからも、誰も見たことも、踏み入ったことも、
潜ったこともない世界を、棋譜と誠実な言葉で表現してくれるはずだ。

(M.N)

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