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スタッフブログ

落語を愛した人

古典落語の名手、鬼才、超のつく毒舌家、反逆児・・・
この人ほど多彩な才能にあふれ、同時に「破天荒」という
言葉が似合う芸人もいまい。落語家の立川談志師匠が
75歳で亡くなった。

45年前に始まり、いまだに人気のテレビ番組「笑点」の
初代司会者。大喜利で、答えの面白さによって座布団が
もらえたり、取られたりする仕掛けを考案したという。
畳を積み上げた上に座る牢(ろう)名主にヒントを得た
というから、才気が知られる。

若いころから落語のうまさに定評があり、将来を
嘱望されていた。が、その後は参院議員に当選したものの
"放言"を連発したり、真打ち制度などをめぐり落語協会と
対立して脱会したり。人生の軌跡は波乱に富んだ。

高座から居眠りしている客を見つけ、「やる気がなくなった」
と噺(はなし)を中断したのもこの人らしい。しかしこれは、
落語を深く愛すればこそ、食道がんを公表した後も、
高座に上がることにこだわり続けた。

晩年に語っていられる。「長生きをする人は暴飲暴食をしない。
それじゃ面白くない。生きてっるていうだけじゃ、おれはだめ」
「引き際、死にざまほど難しいことはない」。

先輩の六代目三遊亭円生、上野動物園のパンダが死んだのと
同じ日に亡くなった。それで翌日の新聞記事の扱いが小さくなった。
「どんな死に方を望むか」と聞かれた談誌師匠、「そんな日は
避けよう」。最後まで才気を振りまいて、旅立たれた。

(M.N)


 

稀勢の里大関昇進

稀勢の里が大関に昇進した。技巧や派手さは薄いが、
力と気迫で正面から全力でぶつかり一歩も引かない相撲は、
師匠の先代鳴戸親方(元横綱隆の里)に似ている。

早くから大関候補と言われた稀勢の里は今場所、
師匠の急死という悲しみの中での土俵となった。
ここ数年は一進一退の星勘定が多かったが、昨年の九州場所で
白鵬の連勝を63で止めた実力は十分。今場所も
正々堂々とした取り口で、審判員らの高い評価を得た。

先代鳴戸親方は現役時代、糖尿病を患いながらも辛抱と
精進を重ねて横綱に登りつめた。猛稽古で肩に隆起するように
ついた筋肉と、腰は高いが怪力で相手を投げ飛ばす相撲を忘れない。
引退後は弟子の指導に熱心で、土俵外でも「人間の幅を広げろ」と、
読書や芸術鑑賞を勧めたという。

稀勢の里はインタビューで「親方に指導してもらったことを思い出し、
しっかりと相撲をとった」「慢心しないでもっともっと上を目指す」
と述べた。悲しみを乗り越え、亡き師匠への恩返しの報告と決意表明
となった。

日本力士の低迷に合わせるように、相撲人気が下降した。
そうした中、琴奨菊に続き、二場所連続で日本人大関の誕生という
朗報だった。存亡がかかった土俵際の今こそ、日本人力士の再起が
欠かせない。稀勢の里、琴奨菊が新たな時代を切り開くことを願いたい。

(M.N)

三現主義

日本の経済成長を支えたのは「三現主義」だといわれる。
問題解決には机上の論理でなく「現場に行く」「現場を知る」
「現場をとらえる」ことが重要という教えだ。

それを象徴する人といえば、伝説となった二人の創業者だろう。
ホンダの本田宗一郎さんと、松下電器(現パナソニック)の
松下幸之助さんで、両氏の信奉者は今も多い。

本田さんは、F1レースでエンジンが故障した時に、
言い訳する設計者に「実際に経験もせんで、偉そうなことを言うな」
と一喝し、自分で修理したという。

鍛冶屋の息子で、根っからの技術者だった本田さんらしい
エピソードだ。さらに現場にこだわった人ならではの名言も残した。
「最初に失敗したやつが一番偉い」。何よりチャレンジ精神を称揚した。

もう一人の松下さん。ある会社社長が「知恵あるものは知恵を出せ。
無き者は汗を出せ。それもできない者は去れ。と訓辞したのを聞き
「あかんな、つぶれる」と言ったという。

「本当は、まず汗を出せ。汗の中から知恵を出せ。それが
できない者は去れ。。こう言わなあかん。松下さんの予想は的中した。
(斉藤孝著「説教名人」)

確かに判断に迷うとき、あれこれ頭で考える場面はあるが、
最終的には「現場」「現物」「現実」を見ることが肝心。
「三現主義」だ。課題が山積する日本の政治家や経営者には、
ぜひかみしめて欲しい言葉である。

(M.N)

縮み社会に抗して

「サラリーマンは、気楽な稼業ときたもんだっ」と植木等さんが
歌ったのは、50年も前のことだ。時代は高度経済成長にかじを切っていた。
所得倍増の掛け声にあわせて朝は朝星、夜は夜星、人々は脇目も
振らず働いた。

テレビに冷蔵庫、洗濯機は高価だったが、生活を切り詰めれば
手が届いた。三種の神器と呼ばれたそれらの製品が、明日は今日より
よくなるという成長神話を描いてくれた。株価も上がるし地価も上がり
続ける。人々はローンを頼りにマイホームの購入に走った。

そういう流れに影が差して久しい。人口は長期にわたって減り続け、
企業活動も消費も低迷を続けている。税収は減り、勤め人の給料も
上がらない。懸命に働いても、分配に充てる成功の果実は小さくなる
ばかりだ。逆に年金や医療費の負担は増えていく。

政治家も小さくなった。国家の経綸(けいりん)を述べるより、
小さくなった果実の奪い合いに血道を上げる方が重宝される。
それを怠れば、選挙で落とされる。それが政治という器をますます
小さくさせる。

そういう時代をいかに生きるか。先日、大学で働く友人と話し込んだが、
結論は「頭に入れれば重くない」。とにかく教育に力を尽くし、
若い人の知的思考力を養うしかないのではないか。ということに落ち着いた。

知力と国境を越えて暮らしていける体力。それさえあれば、落日の時代にも
和やかに生きていける。もっと、教育に目を向けたいとつくづく感じる。

(M.N)

 

ブータン国

幸せかどうかはお金やモノでは測れないという。ないよりは
あったほうがいいとは思うが、やはりモノでは満たされないものが
そこにある。来日中のブータン国王夫妻を見て、ふと思った。

インドと中国に挟まれたブータンはチベット仏教の国。
互恵互助の伝統やボランティア意識が若者たちにも受け継がれ、
「幸福立国」とも言われる。

憲法には、国民がどれくらい幸福かを示す「国民総幸福」
という指標が設けられ、政府は国民の幸福感を満たすために
何を行うべきかを知り、政策に反映させるという。

日常的なストレスを感じているか、睡眠や働く時間は、
家族がお互いに助け合っているかなど、わが身を振り返ると
果たしてーと思われる項目もあるそうだ。

来日中の国王夫妻は包容力や優しさ、人を思いやる心が
全身からあふれ、見るだけで幸福感を覚える。東日本大震災の翌日、
国王は一日中、日本のために祈り続けたとも聞く。

経済発展も確かに重要ではある。それにも増して心の豊かさが
今私たちに問われているのではないか。心に感じる小さな幸せを
大切にしたい、としみじみ思う。

(M.N)
 

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