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師弟関係

柔道女子トップ選手への暴力問題をきっかけに、
日本のスポーツ界で「選手と指導者の在り方」が問い直されている。
重いテーマだなと思っていた折、「いい話」が聞こえてきた。
競泳男子平泳ぎの北島康介選手が、かって師事した平井伯昌
コーチの下で練習し現役を続行するという。「水泳人生を
締めくくるには、もう一度平井先生に指導してもらいた」。
弟子からうれしい声のプレゼントが届けられた。

平井コーチの教えを請うため海外からも有力選手が来る。
選手は技術の取得に集中する。そこに暴力の入り込む余地はない。
感情を制御できず、選手に暴言を吐き、手を出す。コーチの
力不足を露呈しているようなものだ。「情熱」の継続は
根気のいる作業でもある。

かってのプロ野球選手で、巨人の荒川博、王貞治両氏の
師弟関係は有名だ。打者に転向して力を発揮できない王選手に、
荒川コーチは「一本足打法」を挑戦させる。ひたすらバットを振る。
思いを共有することで困難を乗り越えた。

体操男子のアテネ五輪団体総合金メダリスト、塚原直也選手は
旧ソ連の元エース、故ニコライ・アンドリアノフ氏に8年間、教わった。
「知恵のあるコーチ」に出会ったことが幸運だったと話した。
「知恵」とは多彩な指導の引き出しを持つことだと思う。

 

マスクが手放せない

毎年春になると、遠く中国からやって来るのが「黄砂」だ。
関東地区でも4月下旬から5月上旬にかけての数日は、
黄砂現象が見られ、洗濯物や車を汚すなどの被害も出る。
ところが今年は、その季節を待たずに、厄介なものが
中国から飛んできている。大気汚染物質が、風に乗って
日本にまで飛んできているのだ。

問題は、肺がんやぜんそくを引き起こす可能性があると
される微小粒子状物質「PM2,5」が含まれていること。
福岡市では今年に入り、環境基準値を上回PM2,5の数値を
3日間観測されたそうだ。環境省では日本に飛来するまでに
濃度は薄まっており、「健康への影響が出るレベルではない」
とするものの、やはり不安は募る。空中を漂う汚染物質は、
航空機や船のように追い払うことができない。

元を断つのが一番だが、経済発展を最優先させる中国にとって、
環境悪化を食い止める方針に急激に舵を取るのは難しいだろう。
とはいえ、中国の経済発展のツケを回されるのだけは
願い下げたいものだ。粒子は小さくて通常のマスクを通り抜けるため、
効果はないとされる。ただ、インフルエンザの流行、大気汚染物質
の飛来、花粉の季節が続くとなれば、しばらくはマスクが手放せない。

孫への教育資金

昭和を代表する作家の一人に吉川英治作家がいる。
代表作は「宮本武蔵」や「三国志」「新・平家物語」など。
これらを原作とした映画やテレビドラマは数多い。

工場勤めだった若い頃、彼の元に母親から小包が届いたそうだ。
中を開けてみると欲しかった本と一緒に、刻みタバコがあった。
愛煙家だった息子のため、夜な夜な針仕事を続けては、
お金をため、やっとの思いで買いそろえたに違いない。

その優しい心に触れた息子は、胸が熱くなり泣いた。
以来、彼は小包を結わえてあった母の赤い腰ひもを
肌身離さず身に着けた。苦労しながらも独学を続けた
吉川英治作家は、やがて文化勲章の受章作家となった。
扇谷正造著「君よ朝のこない夜はない」(講談社)にあった逸話だ。

その昔は、親たちが汗水を流して働き、子供たちの教育資金を
工面した。青雲の志を抱き、地方から都会の大学などに進むと、
なおさら学資もかさんだ。大作家が晩年になっても語った
赤い腰ひもではないが、故郷からの仕送りは何物にも代え難いものだった。

政府・与党は新たな税制改正大綱案を固めたようだ。この中では
祖父母が孫に教育資金を一括して贈与する場合、1人当たり
1500万まで非課税とする方針。高齢者の資産を若い世代に
移すことで、消費を促す狙いらしい。

「シックスポケット」なる言葉がある。今の子供には両親のほか、
父方母方の祖父母を加えた六つの経済的な財布を指す。
税改正で今後は四つの財布からも教育支援が増えるとすれば、
そのありがたみをどう子に伝えたらいいのか、それも親の務めとなる。

円高と円安の変動

対立する価値観の双方を丸く収めることがいかに至難か、
その立場を最も痛感するのは政治家だろう。円高に怨嗟
(えんさ)の声が上がっていたのにいざ円安に振れると
今度は逆の声が上がり出したからだ。

どこまでも平行線をたどる円高と円安の変動はいずれかの側に
利益をもたらし、一方には逆となるのだが、近年はずっと円高が
続いていたため輸出産業を中心に是正の要望が高まっていた。
安部政権の誕生でインフレターゲットが定まるとすぐ市場が反応、
久しぶりに円安基調となったことに喜びの声が上がるのは当然だ。

しかし誰もが円安を歓迎しているわけではない。原材料を
外国から輸入している側には円の目減りとなるので、こちらの
市場もただちに反応した。原油、ガス、石炭、その他天然素材を
高く買うハメになれば一転して円安反対の空気が高まっていく。

輸入も輸出も為替の変動が利害に直接結びつくため、
当事者が一喜一憂するのは仕方ないが、良いときは
口をぬぐっておいて悪くなると騒ぎ出すというのは勝手すぎる。
そこは考えようで、どちらが国益にかなうのか比較してみるのも
ムダではあるまい。

一般庶民には例えば輸入原料を安く入手できる円高の方が
プラスになる。しかし円安となって貿易高が増え、それが経済を
潤すならそちらのメリットも大きいはずだ。つまり二人の息子が
傘屋と下駄屋だったら、雨にしろ風にしろどちらかが困ると考える
のではなく、どちらかが儲かるとプラス思考すれば、そう大騒ぎする
必要もないと思うのだが、甘い考えか。、
           

日野原重明さんの講演

先日、聖路加国際病院理事長の日野原重明さんの講演を聴いた。
長寿や健康の秘訣を伝授する講演は人気があり、会場は満員だったが、
この日の演題は「緩和ケアの今後の課題」だった。それでも
終末期医療の実態をユーモアを交えてしゃべられ、時折会場を
沸かせておられた。1時間、つえも手にせず立ったままだった。

避けられない最期を見つめたことが2度ある。義父と友人だった
同級生の死。どちらも末期がんだ。義父は最初、緩和ケア病棟へ
入ることを拒んだが、痛みに耐えかね処置を受け、眠るような最期を
迎えた。友人は自宅での最期を選んだ。通夜で親父さんが
「あんなに苦しむとは」と目頭を押さえていた。

日野原さんは「身内を失うと自分の過去を失う。といわれる。
友を失うと自分の一部を失う」といわれる。失ったものは慰めの言葉では
埋めきれない。「時間が解決することを信じること」なのだ。
緩和ケア施設は大幅に不足しているそうだ。縁者が身近にいない
独居高齢者の最期をだれが看取るのか。

施設増に取り組む日野原さんは「患者が納得するケアを施し、
最期に感謝の言葉と気持ちを引き出すのが寄り添う人の使命」
といわれる。穏やかな表情だが、101歳の重鎮の言葉は重い。

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