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敬老の日

 老いの自覚は人それぞれ、とらえ方も時代によって変わる。
団塊世代に「高齢者は何歳から?」と尋ねたら、8割が「70歳以上」
と答えたそうだ。世界保健機関の定義「65歳以上」はそろそろ
改めるべきだろう。

団塊世代の先頭集団にいるエッセイストの南伸坊さんは、
「オレって老人?」と著書で疑問を投げ掛ける。今年66歳。
老いの実感がなく、年齢も気にしない。若さ偏重の風潮が
生まれたのは戦後、米国の影響であり、反発を覚えるとか。

対照的に江戸時代は老いが尊ばれた。寛政の改革を進めた
松平定信は白河藩主のころから、「敬老の日」を設けて高齢者を
城に呼び、意見に耳を傾けた。足腰の弱った者には駕篭(かご)
を差し向けたほどだ。人生経験豊富な高齢者の情報や知恵を
政治に生かそうとしたのだ。

若さより老いに価値を置いた社会である。老いを表す言葉も
大事にした。高齢の域に達することを「老人(おいれ)」と称した。
現代の「老後」より、実に前向きだ。江戸の庶民は「いい老人」を
迎えることを人生の目標にしたそうだ。

いまや総人口の4人に1人が65歳以上でである。人工減少社会で、
大勢の元気な高齢者の知恵と力を生かせないだろうか。あすは
「敬老の日」。この連休、老いに思いを巡らすのも悪くないと思うのだが。

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