- 2012年5月11日 12:39
- M.N氏の岡目八目
映画として「ビルマの竪琴」を見た覚えがある。市川崑監督が
最初にメガホンを取ったモノクロの作品だ。兵士たちが口ずさむ
「埴生の宿」の美しい合唱。僧となった水鳥上等兵が奏でる
「仰げば尊し」のメロディーが印象的だった。
その「ビルマ」から名称を改めたミャンマーで、民主化に向けた動きが
進んでいる。同国では長年にわたり軍事政権が続いていた。だが、
欧米からの厳しい経済制裁もあり、大きく方向を転換。先日行われた
連邦議会の補欠選挙は、国際社会から注目を集めた。
一連の民主化運動を指導してきたのはアウン・サン・スー・チー氏。
この間、度重なる自宅軟禁をはじめ、英国にいる家族との別離など
数多くの苦難があった。それにもめげることなく、固く重い扉を
少しずつこじ開けてきた。
彼女は「ビルマ建国の父」と呼ばれた将軍の娘。そうした血筋
だからこそ常人にはまねのできない、強い意志を持ち続けたのだ
ーと勝手に思い込んでいた。しかし、「地名の世界地図」(文春新書)
で調べてみると、ミャンマーとはビルマ語で「強い人」の意味。
なるほど合点がいった。
首都「ヤンゴン」の地名も興味深い。「戦いの終わり」という意味を持つ。
僧俗や学生など数千人が虐殺されたとされる自由化への戦いが、
いよいよ終わりに近づいたのだろうか。
あぁ、やっぱり自分は帰るわけにはいかないー。「ビルマの竪琴」の
ラストは、水島上等兵の心を代弁したオウムの声だった。
夫や子供と離れ、祖国にとどまったスー・チー・氏。二つの心が
重なって見えた。