- 2012年2月 3日 12:11
- M.N氏の岡目八目
映画「地獄門」(1953年公開)は、平安時代の武士が
人妻に懸想、人妻が夫の身代わりに武士の凶刃に倒れる物語だ。
武士は長谷川一夫さん、人妻を京マチ子さんが演じ、カンヌ
映画祭でグランプリを受賞した。
武士は後の僧侶・文覚の遠藤盛遠、人妻は渡辺渡の妻・袈裟
(けさ)で、菊池寛の戯曲「袈裟の良人」を原作としている。
原作には「平家物語のころ」とあるから、平安末期の物語だろう。
その盛遠が吉川英治の「新平家物語」冒頭に出てきて驚いた。
平清盛が学んだ学舎の学友との設定だ。清盛の生誕は元永元
(1118)年、盛遠=文覚は20年ほど下るから学友はあり得ないが、
物語の展開上、必要だったのだろう。
「新・平家」にはもう1人、出家した武士が出てくる。後に西行となる
佐藤義清だ。父を慕う4歳の娘を縁の下に突き落とし、泣き声を
聞きながら髻(もとどり)を切ったと描かれているからすざまじい。
西行は清盛と同じ年生まれ、同僚だった可能性もある。
NHKの大河ドラマ「平清盛」が始まった。51作目となるようだ。
序盤は若き清盛が描かれ、義清も同僚として登場する。
「平家物語」には文覚の紀述はあるが、西行の記述は見つからないから
「新・平家物語」などを参考にしたのかもしれない。
権力の頂点まで上り詰めて栄華を極めた清盛と、俗世を絶った
法師らは、今後どんな交わりを見せるのだろうか。、そんな
視点からの鑑賞も興味深く楽しみにしている。