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あだ名

あだ名を直感でつけることが似顔絵を描くツボ、といわれるのは
政治漫画を仕事にしてきた山藤章二さんだ。この世界に入って
彼の初のモデルになった首相が田中角栄氏とのことだ。

人間味のある人物だったために政治家を表現する面白さにたちまち
魅入られたという。つけたあだ名は「ちょびひげをつけたコッペパン」。
以来歴代首相に自分流のあだ名をつけて似顔絵を描いた。福田赳夫氏は
「穫(と)り入れを忘れた古いヘチマ」。言い得て妙だ。

野田佳彦首相がテレビカメラの前で記者の質問に答える、
ぶら下がり取材を拒んだままだ。「駅前以外語らないノダ」などと
なってはいけないと思うのだが。「延長負け戦」で党を崖っぷちに
追いやった前首相の管直人氏のときも途中からやめている。

「古いヘチマ」は4人前の首相、福田康夫さんの父だ。
その親子の間にいた首相は15人。在職期間は1人平均1・7年。
同じ期間内に首相をした竹下登氏の「歌手1年、総理2年の使い捨て」
の名言も的確ながら、使い捨て状態がひどくなったのは言うまでもない。

野田首相もそれは望まないはずだから国民との距離は十分考えて
いられるはずだ。ぶら下がり会見の代わりを検討中なら、晴れても
降っても日々語る方法がいいと思う。同首相が理想とするのは
地味で着実な仕事ぶりから小渕恵三、大平正芳両氏だそうだ。

小渕氏が「山から降りてきた炭焼きおじさん」、読書好きだった
大平氏は「書斎が好きな平家蟹(がに)」だ。山藤さんのエッセー
「まあ、そこへお座(すわ)り」にある。あだ名の寸評はお任せする
としてあだ名も首相本人の気概や努力次第といえると思う。

(M.N)


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