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2011年11月 Archive
三現主義
- 2011年11月29日 11:59
- M.N氏の岡目八目
日本の経済成長を支えたのは「三現主義」だといわれる。
問題解決には机上の論理でなく「現場に行く」「現場を知る」
「現場をとらえる」ことが重要という教えだ。
それを象徴する人といえば、伝説となった二人の創業者だろう。
ホンダの本田宗一郎さんと、松下電器(現パナソニック)の
松下幸之助さんで、両氏の信奉者は今も多い。
本田さんは、F1レースでエンジンが故障した時に、
言い訳する設計者に「実際に経験もせんで、偉そうなことを言うな」
と一喝し、自分で修理したという。
鍛冶屋の息子で、根っからの技術者だった本田さんらしい
エピソードだ。さらに現場にこだわった人ならではの名言も残した。
「最初に失敗したやつが一番偉い」。何よりチャレンジ精神を称揚した。
もう一人の松下さん。ある会社社長が「知恵あるものは知恵を出せ。
無き者は汗を出せ。それもできない者は去れ。と訓辞したのを聞き
「あかんな、つぶれる」と言ったという。
「本当は、まず汗を出せ。汗の中から知恵を出せ。それが
できない者は去れ。。こう言わなあかん。松下さんの予想は的中した。
(斉藤孝著「説教名人」)
確かに判断に迷うとき、あれこれ頭で考える場面はあるが、
最終的には「現場」「現物」「現実」を見ることが肝心。
「三現主義」だ。課題が山積する日本の政治家や経営者には、
ぜひかみしめて欲しい言葉である。
(M.N)
縮み社会に抗して
- 2011年11月28日 14:02
- M.N氏の岡目八目
「サラリーマンは、気楽な稼業ときたもんだっ」と植木等さんが
歌ったのは、50年も前のことだ。時代は高度経済成長にかじを切っていた。
所得倍増の掛け声にあわせて朝は朝星、夜は夜星、人々は脇目も
振らず働いた。
テレビに冷蔵庫、洗濯機は高価だったが、生活を切り詰めれば
手が届いた。三種の神器と呼ばれたそれらの製品が、明日は今日より
よくなるという成長神話を描いてくれた。株価も上がるし地価も上がり
続ける。人々はローンを頼りにマイホームの購入に走った。
そういう流れに影が差して久しい。人口は長期にわたって減り続け、
企業活動も消費も低迷を続けている。税収は減り、勤め人の給料も
上がらない。懸命に働いても、分配に充てる成功の果実は小さくなる
ばかりだ。逆に年金や医療費の負担は増えていく。
政治家も小さくなった。国家の経綸(けいりん)を述べるより、
小さくなった果実の奪い合いに血道を上げる方が重宝される。
それを怠れば、選挙で落とされる。それが政治という器をますます
小さくさせる。
そういう時代をいかに生きるか。先日、大学で働く友人と話し込んだが、
結論は「頭に入れれば重くない」。とにかく教育に力を尽くし、
若い人の知的思考力を養うしかないのではないか。ということに落ち着いた。
知力と国境を越えて暮らしていける体力。それさえあれば、落日の時代にも
和やかに生きていける。もっと、教育に目を向けたいとつくづく感じる。
(M.N)
ブータン国
- 2011年11月22日 20:24
- M.N氏の岡目八目
幸せかどうかはお金やモノでは測れないという。ないよりは
あったほうがいいとは思うが、やはりモノでは満たされないものが
そこにある。来日中のブータン国王夫妻を見て、ふと思った。
インドと中国に挟まれたブータンはチベット仏教の国。
互恵互助の伝統やボランティア意識が若者たちにも受け継がれ、
「幸福立国」とも言われる。
憲法には、国民がどれくらい幸福かを示す「国民総幸福」
という指標が設けられ、政府は国民の幸福感を満たすために
何を行うべきかを知り、政策に反映させるという。
日常的なストレスを感じているか、睡眠や働く時間は、
家族がお互いに助け合っているかなど、わが身を振り返ると
果たしてーと思われる項目もあるそうだ。
来日中の国王夫妻は包容力や優しさ、人を思いやる心が
全身からあふれ、見るだけで幸福感を覚える。東日本大震災の翌日、
国王は一日中、日本のために祈り続けたとも聞く。
経済発展も確かに重要ではある。それにも増して心の豊かさが
今私たちに問われているのではないか。心に感じる小さな幸せを
大切にしたい、としみじみ思う。
(M.N)
人型ロボット
- 2011年11月15日 09:39
- M.N氏の岡目八目
電話中に目の前で別の人に話し掛けられ、どちらの声も
聞き取れず困ったことがある。同時に複数の人の話を聞くことが
できればいいのだが、一度に二つのことはできない性分だ。
先日、ホンダが発表した人型ロボットASIMO(アシモ)の新型は
同時に複数の人の顔や言葉を認識できるといい、聖徳太子も
びっくりの性能だ。
対向して歩いてくる人の動きを予測してぶつからないように進み、
片足ジャンプも可能。瓶を手に取りふたをひねって開け、手話もできる。
2000年に誕生したアシモ。当時は二足歩行に驚かされながらも、
その動きにロボットらしさを感じた。年々進化し、今は人をも超える
性能を備えた。ロボットが大概のことをこなすようになれば、人は
どうなるのか。
「百のうち九十九まで失敗する。われわれは勝負師ではない。
負けても何が原因で負けたのかを追求することに意義がある」とは
ホンダ創始者・本田宗一郎氏の言葉だ。
アシモも幾多の失敗と追求のたまものだろう。人とロボットの境目が
薄れていくが、たまに失敗するぐらいの愛嬌は残しておいて欲しいと
負け惜しみを言いたくなる。
(M.N)
秋の陣
- 2011年11月11日 11:45
- M.N氏の岡目八目
秋の日を浴びて天高く聳(そびえ)え立つ大阪城天守閣。
その天守閣が復興されて11月7日で80周年を迎えた。
秀吉時代の首都・大阪の歴史をたどるイベントが催しされて
いるそうだ。秀吉が築いた大阪城は、豊臣家繁栄の象徴。
城を中心に城下町・大阪を開き、今日の商都・大阪の礎を築いた。
首都・東京と並ぶ2大都市として日本の発展の一翼を担ってきた。
時代は移り、今、府知事・市長ダブル選が熱く燃えている。
大阪市を解体し「大阪都」構想の実現を目指す橋下前知事、
片や真っ向から反対し「特別自治市」構想を掲げる平松前市長。
府と市のトップ2人による前代未聞の直接対決である。
維新の会に既成政党も加わっての戦いは、単に大阪だけの争いに
とどまらない。いずれが豊臣か、徳川かは知らぬが、大阪を
二分する戦いは、豊臣と徳川の攻防・冬の陣、夏の陣をもじって
「秋の陣」とも称される。
愛知県と名古屋市の「中京都」構想や横浜、神戸など政令都市の
「特別自治市」構想も持ち上がっている。秋に陣の行方はこれからの
地方自治や大都市のあり方を左右する大きな機会にもなる。
NHK大河ドラマ「江」では、ひと足早く大阪の陣が決着した。
(M.N)
経済成長
- 2011年11月 6日 18:25
- M.N氏の岡目八目
これからどうやって再生するのだろうか。世界経済を揺るがす
ユーロ危機の火種となった、ギリシャである。欧州各国が話し合いを重ねて、
ようやく危機を収める枠組みができたようだ。膨大なギリシャの借金は
半分近くを棒引きにするそうだ。それで経営の屋台骨が揺るがないように
銀行は自己資本を厚くする。今後、同じように財政難に陥る国が出てくる
のに備えて、各国で基金を積み増すとのことだ。
だが、あくまで最悪の事態をにらんだ貸し手の防衛作である。
古今東西、貸し手が行き詰った借り手の将来まで案じてくれはしない。
借金に頼らず国の経済を成り立たせる道は、ギリシャが自ら切り開く
しかない。
政府は財政再建を揚げて増税や年金削減を断行し、国民の怒りを
買っている。55歳から受け取れる年金などの厚遇には共感しづらい
面もある。しかし将来展望が示されないままリストラを強いられるだけでは、
猛反発する心情も分からなくはない。
地中海の青い海と空。白く輝くバルテノン神殿。世界中から観光客が
集まり海運業も盛んな国だが、ほかに目立った産業はない。
経済を成長させて国民の懐を温め、税収を伸ばさなければ、いずれまた
借金が増えるのは目に見えている。
ギリシャの二の舞だけは避けようと、日本でも財政再建の議論が
熱を帯びている。とはいえ増税や節約ばかりでは国民の士気は高まらない。
元気が出るような経済成長の種を、上手にまく必要があるのだが。
(M.N)
あだ名
- 2011年11月 6日 18:20
- M.N氏の岡目八目
あだ名を直感でつけることが似顔絵を描くツボ、といわれるのは
政治漫画を仕事にしてきた山藤章二さんだ。この世界に入って
彼の初のモデルになった首相が田中角栄氏とのことだ。
人間味のある人物だったために政治家を表現する面白さにたちまち
魅入られたという。つけたあだ名は「ちょびひげをつけたコッペパン」。
以来歴代首相に自分流のあだ名をつけて似顔絵を描いた。福田赳夫氏は
「穫(と)り入れを忘れた古いヘチマ」。言い得て妙だ。
野田佳彦首相がテレビカメラの前で記者の質問に答える、
ぶら下がり取材を拒んだままだ。「駅前以外語らないノダ」などと
なってはいけないと思うのだが。「延長負け戦」で党を崖っぷちに
追いやった前首相の管直人氏のときも途中からやめている。
「古いヘチマ」は4人前の首相、福田康夫さんの父だ。
その親子の間にいた首相は15人。在職期間は1人平均1・7年。
同じ期間内に首相をした竹下登氏の「歌手1年、総理2年の使い捨て」
の名言も的確ながら、使い捨て状態がひどくなったのは言うまでもない。
野田首相もそれは望まないはずだから国民との距離は十分考えて
いられるはずだ。ぶら下がり会見の代わりを検討中なら、晴れても
降っても日々語る方法がいいと思う。同首相が理想とするのは
地味で着実な仕事ぶりから小渕恵三、大平正芳両氏だそうだ。
小渕氏が「山から降りてきた炭焼きおじさん」、読書好きだった
大平氏は「書斎が好きな平家蟹(がに)」だ。山藤さんのエッセー
「まあ、そこへお座(すわ)り」にある。あだ名の寸評はお任せする
としてあだ名も首相本人の気概や努力次第といえると思う。
(M.N)
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