- 2011年9月17日 15:50
- M.N氏の岡目八目
スダチとカボス。違いがよく分からない。
双方とも果汁を焼き魚や刺し身に薬味として添える。
地味だが、料理の引き立て役だ。
岐阜から天下布武を唱えた織田信長。本能寺の変で
野望が朽ちた時、徳川家康はわずかな
家来とともに堺に留まっていた。身の危険を知った家康は、
三河の岡崎城までどう戻るかを案じたという。
この時、忍者服部半蔵の計らいで伊賀の山中をかろうじて抜け、
岡崎までたどり着いたらしい。家康は様々な局面で
忍びの者を使い、半蔵はその功績から江戸城近くに屋敷を与えられた。
現在の東京の地下鉄半蔵門線や駅名の半蔵門はその名残とか。
脇役の忍びの者が、こんな形で後世に名を残すとは。
だが薬味のような地味な引き立て役がいなければ家康の名も
残らなかったかもしれない。
秋の食卓と言えばサンマの塩焼き。薬味はスダチや大根おろし、
甘酢ショウガがよく似合う。久しくお目にかからないマツタケにも
スダチが薬味になる。
食べる喜びは生きる喜び。つらい、苦しいは生きるための薬味と思えば、
困難は生を彩(いろど)るために欠かせない妙味に変じる。家康も
「不自由を常とおもへば不足なし」と辞世の句を詠んだ。
東日本大震災から半年が過ぎた。被災地の食卓のサンマ。
その薬味をただ思う。