- 2011年7月12日 19:54
- M.N氏の岡目八目
東日本大震災や電力不足の影響で、製造業が相次いで
日本から逃げ出すのではないか、との懸念が強まっていると聞く。
もともと産業界は、世界でも厳しい環境規則、高い法人税、
新興国と比べると割高な賃金などをあげ、
「まるで製造業は日本を出て行けと言わんばかりだ」と不満を
漏らしていた。
そこへ震災が襲い、経営者は大地震リスクを再認識するとともに、
生産拠点を国内外に分散する必要性を痛感した。
さらに定期点検を終えた後も原発が再稼動できない状況となり、
電力不足が全国で長期化する可能性が高まった。
民間エコノミストの間でも「いよいよ製造業の海外移転が
加速し、国内産業の空洞化が本格化する」との見方が広がる。
ところが、自動車や電機などの大手企業の経営者は
「むしろ日本市場は今後成長が期待できる有望市場」との意外な
答えが返ってきた。その背景には太陽光や風力、地熱など
再生可能な自然エネルギーを活用した「新たな成長分野」が、
急速に台頭してくるとの読みがあるようだ。
自動車業界は電気自動車(EV)を「各家庭専用の大型蓄電器」として
普及させ、電機業界はIT技術で効率的なエネルギーの利用を目指す
次世代送電網「スマートグリッド」を中核事業に育てることで、
それぞれに高い成長が期待できる「新しい商品」を手にするというのだ。
日本製造の技術力はレベルが高いだけでなく、幅広い分野に及ぶ。
環境文化にしたたかに適応しようとする「企業の進化」に大いに
期待したいものだ。
(M.N)