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五百羅漢

東京タワーに近い浄土宗の大寺・増上寺は、宗教は異なるが
日光東照宮、上野の寛永寺とともに徳川将軍家の霊廟(れいびょう)
・神社の1つとして知られる。この寺の蔵に幕末の絵師・狩野一信
(1816-63)らが10年の歳月をかけて描いた仏画100幅が、
明治の廃仏毀釈や大戦の戦火を潜り抜けて保存されていたという。

その公開されている大作「五百羅漢」を江戸東京博物館で見てきた。
背丈をはるかに超える大画面に、釈迦の弟子である数人の羅漢が登場し、
人々を救済したりする様子が描かれている。博物館によると、
一信は15世紀から約400年続いた狩野派の最後を飾る絵師で
48歳で病没するまでの10年間をこの製作に費やした。

21幅の「六道地獄」からは幕末の不安な空気、
82幅の「七難震」からは安政の大地震当時の阿鼻叫喚(あびきょうかん)
が伝わってくる。羅漢の存在感、迫力に思わず息を呑む。

今年は平安末期から鎌倉初期を生きた浄土宗の開祖・法然の
没後800年。博物館は、この機会にと「五百羅漢」を企画したという。
法然といえば、宇都宮氏と交流があった人物であり、当時の下野国
とも縁がある。

一信も、法然と同じような時代の変わり目に生きた。
一信が今に生きていれば、大震災と大津波、原発事故後のこの国を
どう描いただろうか。

(M.N)

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