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技法

東日本大震災で東京タワーは先端が曲がる被害を受けたが、
隅田川近くで建設が進む東京スカイツリーは、
震災の一週間後に634メートルと完成時の高さに達した。

自立式の電波塔として世界一の高さだけに、
安全のための工夫に力が注がれる。「心柱(しんばしら)」
もその一つ。塔の中にある鉄筋コンクリートの筒で、
上部は塔に固定されていない。本体とは違う揺れ方をして
地震や強風の影響を抑える。

1400年前に建立された法隆寺に使われた技法だ。
昭和の大修理を手掛けた宮大工の故西岡常一さんは著書
「木に学べ」(小学館)に書いた。
「ゆうらゆうら動いて、力が抜けるとまた元どおりに、
じっとおさまる。塔とはそういうふうに作るもんなんです」。

法隆寺の五重塔は心柱に納める仏陀(ぶつだ)の遺骨を守るために
建てられたが、スカイツリーが担うのはデジタル放送の電波を送る
機能だ。災害時にまず必要なのは情報だろう。
被災者と社会を結ぶ大切な役割を果たしてほしい。

法隆寺の五重塔には、先人たちが自然と向き合い、
学んだ技法と美意識が疑縮される。逆らわず、柔軟に。
そんな発想が、先端技術を駆使する東京スカイツリーにも受け継がれる。
来春の完成が待ち遠しい。

(M.N)

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