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二重被爆

チャーチル元英首相の名言が思い出される。
「築き上げることは、長年かかる骨の折れる仕事。
でも破壊するのは、たった一日の思慮のない行為で足りる」。
まさに地でいくような出来事というほかあるまい。

広島と長崎で二重被爆した山口彊(つとむ)さんを
「世界一運が悪い男」とお笑いテレビ番組で
ジョーク交じりに取り上げた英BBC。
きのこ雲の写真を掲げたスタジオから笑い声が上がる。
「不適切な無神経」と日本大使館が抗議したのは当たり前だ。

BBCといえば、核問題を取り上げた優れた番組制作で知られる。
7年前には取材クルーが広島県内に滞在。原爆投下をテーマにした
ドキュメンタリーを撮影した。被爆者の声を聞き、平和記念式典にも
レンズを向けた。

今回は娯楽番組とはいえ、きのこ雲の下で起きた惨状に
思いが至らなかったのだろうか。BBCは「不快な思いをさせて申し訳ない」
と慌てて謝罪。原爆に対する日本人の敏感さに理解が足りなかった
との弁解を聞いても、釈然としない。

「うち重なり焼けて死にたる人間の脂滲(にじ)みし土は乾かず」。
昨年93歳で他界された山口さんは被爆体験を数多くの短歌に
残していられる。戦後は通訳や教師を務めるほど、
英語にも堪能だったそうだ。その言葉にしっかりと耳を傾けてほしい、
これからでも。

(M.N)

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