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薮入り

古典落語の「藪(やぶ)入り」に出てくる熊さんは、
奉公に出した息子が3年ぶりに帰ってくることが
うれしくてたまらない。あれこれ考えて寝れずに朝を迎えた。

すっかり成長した姿を目にした熊さんは、
びっくりするやら感極まるやら。その息子の財布に大金が
入っているのを見つけ問い詰めるとネズミを捕まえた褒美や
捕まえたネズミの懸賞での賞金ということだった。

預けていた店の旦那から「里の親に渡してこい」と言われて返され、
持参したとの話。感激した熊さんが「これからもご主人を大切にしなよ。
これもやっぱり忠(チュウー)のお陰(かげ)」と言うオチがつく。
 
江戸時代、商家の奉公人は初めの3年は里帰りを許されなかった。
それが過ぎると1月と7月の16日の年2回は休みを得て
実家に帰ることができた。この休日を「薮入り」といった。
語源は諸説あり、定かではない。

子が社会人になっても親が面倒を見続けるケースが多々ある
現代とは違い、その当時の庶民の子は幼さが残るうちから
世の荒波にこぎ出さなければならなかった。
いやがおうにも成長せざるを得なかったわけだ。

落語では、とんちんかんながらも子への愛情にあふれる父親を中心に、
それを暖かく見守る女房、立派に育った息子の真情が語られる。
もしや今よりいい時代だったのかもしれない、と「薮入り」の日に思う。

(M.N)

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