- 2010年12月 6日 19:18
- M.N氏の岡目八目
ライスはフォークの背に乗せて食べる。
テーブルマナー教室でそう教わった人は多いはずだ。
ところが最近は、フォークの腹の部分ですくうようにしてもよいとされる。
マナーが変わったのかと首をかしげる人もいるだろう。
テーブルマナーが日本に持ち込まれたのは明治時代だ。
英国を手本にしたらしい。しかし、フランス式では
フォークを右手に持ち換え、腹の部分を使っても構わないそうだ。
それで近年は英国式へのこだわりが薄れた。
そもそも、洋食でライスは野菜のような位置付け。
米を主食とする日本とは食文化が異なる。
それを洋式に当てはめようとしたのが今日の戸惑いの誘因だから、
マナーの混乱は文明開化の時代の名残とも言えなくもない。
ナイフやフォークで食事をするのは世界の約3割で、
箸を使うのもほぼ同じ割合のようだ。
残る4割は手で食べる。ヒンズー教やイスラム教では
汚れた食具を使うのはタブー。
清浄な手で食べることこそ宗教的な戒律にかなう。
日本でも昔は手で食べたという。三世紀の風俗などを伝える
魏(ぎ)志(し)倭(わ)人(じん)伝(でん)に、
手づかみで食事をしていたと記されているそうだ。
箸が中国から伝わったのは七世紀。
八世紀には一般に普及する。
その後、箸文化は特異な発展を遂げる。
江戸時代、家族がそれぞれ自分の箸を持つようになった。
中国や台湾、韓国などでも箸を使うが、そうした習慣はない。
最近は、箸を洋食器のように家族共用とする家庭も増えたようだ。
ここにも欧米化の一端がのぞく。
(M.N)
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