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チリの落盤事故

チリの落盤事故で、33人の作業員全員が生還して10日余。
世紀の救出劇を全世界が生中継で伝えたが、チリ本国はともかく、
わが国などでは、報道ぶりもようやく落ち着きを取り戻してきた。

時間の経過とともに、69日間に及ぶ坑内での
人間模様なども漏れ聞こえてくるようになった。
中には作業員や家族たちにとって、
あまり触れてほしくないものもあるようだ。

地下700メートルの過酷な環境で生き抜いた作業員たちである。
何があったとしても不思議ではない。
心理学者や精神科医らが彼らの心理と行動を分析するのは
必要であるにしても、部外者が興味本位に見ることだけは控えたい。

気になるのは作業員たちのこれからの人生設計だ。
事故前の貧しくともつつましやかな暮らしに戻ることはもうできまい。
海外への招待旅行、多額の謝礼を伴う講演や執筆依頼など。
映画化もされるそうだ。望むと望まないにかかわず、
彼らは英雄になってしまった。

能力ある者には最高のチャンスであっても、全員がそうとは限らない。
同じ鉱山で働く同僚たちからは「おれも閉じ込められたかった」
との声も聞かれる。救出された作業員の間にも、
やがて嫉妬や不平不満が出てくるかもしれない。

南半球のチリではこれから夏に向かう。
その夏が過ぎるころ、作業員たちの生活はどう変わっているのだろうか。
それぞれの新しい人生が穏やかで幸せなものであることを祈りたい。

(M.N)

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