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運鈍根

ビジネスの世界では「運鈍根(うんどんこん)」が大切だとよくいわれる。
幸運も成功の重要な要素だが才気走ってあれこれ目移りしないこと、
根気よく継続することも必要という意味だ。

科学の世界でも似た言い方をするそうだ。
ノーベル化学賞を受賞した北海道大学名誉教授の鈴木章さんが
テレビのインタビューに答え「セレンディピティ」という言葉を使われていた。
偶然に幸運な予想外の発見をする能力のことだ。

偶然ではあるが、単なる「棚からぼたもち」ではない。
普段から徹底して考え抜いていることが前提。
歴代受賞者の発見の逸話からも、決して狙い通りだったのではなく、
目の前で何が起こっているか虚心坦懐(たんかい)に洞察した結果、
成功につながったことがうかがえる。

鈴木名誉教授は「重箱の隅をほじくるような研究ではなく、
新しい誰もやっていないような研究をしろ」
と学生たちに言っていられるそうだ。
恐らく自身の研究姿勢でもあるのだろう。

ほとんどの人が役に立たないと考えた物質に
目を付けて実験を重ね、ついに鈴木カップリングという
有機化合物の合成法を発見。それが思いがけず
工業製品に広く応用されていった。
鈴木名誉教授は「非常にラッキーだった」と振り返る。
 
今回化学賞を受賞されたもう一人の日本人で
米パデュー大学特別教授の根岸英一さんは「究極の楽天家」
と自己分析れている。
あきらめず幸運を待ち受ける心性こそ大事ということか。
実際には幸運の種が眼前に現れても
やり過ごしてしまうことがどれだけあるだろう。

(M.N)

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