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東近江市

京都の友人から「久しぶりに会わないか」という便りが来た。
大学時代に毎日のように会い、就職後も定期的に集まっていた。
友人の転勤で会わなくなったが、お互いに古希も過ぎ
多少は時間も出来たし、寺回りというほど、高尚な趣味はお互いにないが、
石塔寺(いしどうじ)(東近江市)を訪ねた。

長い石段を登りきると、晩夏の静寂の中、威容が目に入った。
日本最古という石造三重塔は7メートル超の高さよりも、
なまめいた曲線が時の流れを語りかけた存在感に圧倒された。

釈迦入滅後、阿育大王(あしょかだいおう)が
仏法の興隆を願い仏舎利を治めて三千世界にまいた
塔婆(とうば)の一つと伝えられている。
朝鮮半島の白村江(はくすきのえ)の戦い(663年)の後、
蒲生野に移住した700人余の百済(くだら)人が
築造につながるとの説もある。

近江の歴史は奥深い。随筆家の白州正子さん(1998年没)は
その魅力にとりつかれたそうだ。
平城、平安京以前の伝承が残る近江を、「日本の楽屋裏」と評し、
何度も足を運ばれたようだ。

石塔寺などの名所にとどまらず、木地師発祥の鈴鹿山脈の谷間から
湖北、湖西の山里まで深く深く分け入った。
峠の道端で見かけた名も知らぬ石仏さえも、
ふっくらとした彫が美しいと楽しんだ。

能への造詣が深く、若くして日本の古典文学に親しんだ感性が、
近江と共鳴したのだろう。
滋賀県の国宝・重要文化財(建造物、美術工芸品)は807件。
東京、京都、奈良に次いで全国4位。
近江路を歩けば、歴史との出合いがある。

白州正子生誕100年特別展が10月中旬から
滋賀県立近代美術館(大津市)で始まるとのこと。
近江の魅力を白州さんの案内で味わいたいのだが、
隣をうかがうと「そうは行きませんよ」という顔で
妻がテレビを見ている。

(M.N)

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