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古刹巡り

歴史好きの「歴女」や、著名人のお墓を訪ね歩く
「墓萌(も)え」などの造語が、ここ数年の若い女性を
中心としたブームを象徴している。
古刹(こさつ)巡りや仏像のファンも増えているようだ。
特集を組む雑誌、本が書店でも目立つ。
 
先日、都内で開催中の仏教美術を紹介する二つの展覧会に行ってみた。
どちらも女性が特別多いというわけではないが、
幅広い年齢層でにぎわっていた。
仏像のどこに人々は引きつけられるのだろうか。

根津美術館(南青山)は「いのりのかたち」展。
重要文化財の「金剛界八十一尊曼荼羅(まんだら)をはじめとする
密教絵画や来迎図、説話画などが、ホールや庭園の石仏群とともに
崇高な美の空間を構成していた。
 
三井記念美術館(日本橋)の「奈良の古寺と仏像」は、
平城遷都1300年を記念した特別展。
飛鳥から室町時代の仏像、仏教工芸品の名品が一堂に集まり、
その織細な造形美に魅了された。

いずれの展示も、信仰によってはぐくまれてきた美の世界が
重厚な存在感を見せる。
現世では煩悩や物欲に無縁というわけにもいかず、将来は不安だらけ。
現実社会を離れ、自分自身を静かに見つめ直すよい機会だった。

仏像や仏画の前に立てば、そこには穏やかなまなざしとともに、
戒め、教え導く厳格な表情だ。
信仰の対象としても、そうでない人にとっても、
何か新しい発見があるように思う。
父から、仏像はまなざしを見るよう何十年前教わったことを思い出した。 

(M.N)

 

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