- 2010年5月 6日 17:11
- M.N氏の岡目八目
住宅の洋風化が進み、ふすまや障子などの
日本家屋の建具が姿を消しているようだ。
ライフスタイルの変化で和室が減り
ふすまや障子を使う場所が少なくなっているからだ。
日本は「引く」文化だという。従来の日本家屋は壁のほかに
ふすまや障子など、引いて開ける建具で部屋を仕切ってきた。
障子は中国から伝わった言葉だが、
ふすまは日本人が名付けたもので、臥所(ふしど)(寝室)の仕切り用に
布を張ったついたてが原型だそうだ。
欧米は「押す」文化で、ドアは外側から室内方向に
押して開けるのが一般的だ。プライバシーを守るため
レンガや石材などを使った強固な壁で部屋を仕切り
中の音が漏れにくい構造となっている。
しかし、日本人は木と紙ででき、鍵もかからず、物音も筒抜けの
ふすまや障子を壁と同等の「隔て」として過ごしてきた。
こうした生活文化が日本人独特の人間関係や
相手を思いやる心を築いてきたのだろうと
哲学者の故和辻哲郎博士は指摘していられる。
例えば、ふすまが閉まっていれば「入ってほしくないのだな」と思い
中でひそひそ話の声がすれば、「聞かれたくないのだな」と察して
そばを離れる。ふすま文化の中で、他人の気配を常に感じ
気持ちを察し、細かい心配りをすることが
自然と訓練されてきたと言われる。
ふすまにこうした効用があったとは意外な気もするが
日本家屋の良さを見直すきっかけになればと思う。
(M.N)