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歌舞伎座

歌舞伎で主演役者が登場することを「出」といいます。
舞台を歩く単純な演技に、芸が凝縮されています。
この歩く芸を楽しめる作品の一つが
助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)だ。
桜が咲き乱れる吉原。
遊郭の三浦屋へ向かう男伊達(おとこだて)の助六が
花道から登場する。白血病を克服した市川団十郎さんが
東京の歌舞伎座で熱演されている。

その歌舞伎座が老朽化のため建て替えられることになり
今月28日まで「さよなら公演」が行われている。
人間国宝を含む人気俳優のそろい踏みがファンをうならせる。
「助六」はそうした名演目の一つだ。

初代の歌舞伎座は明治半ばの1889年に開場した。
現在の建物は4代目で、太平洋戦争時の空襲によって焼失した
3代目の構造の一部を使って再建されたそうだ。
唐破風(からはふ)と呼ばれる丸い山形屋根の玄関が特徴で
国の登録有形文化財でもある。

蛍光灯を採用したため場内が前より明るくなり
戦前と戦後の「時代の明暗」を感じた、と
演劇評論家の渡辺保さんが書いていらっしゃる。
再開の年には「源氏物語」が初上演され、大反響を呼んだという。
伝統芸を引き継ぎながら
絶えず新しい要素を取り入れてきたのが歌舞伎だと思う。

新歌舞伎座は29階建ての高層ビルに生まれ変わって
3年後に完成すると聞く。
瓦屋根などを再利用し、今の外観は継承されるそうだ。
伝統文化の情報を世界に発信する拠点機能も備えるそうだ。
そこでどのような芸が育つのか
新しい歌舞伎座の「出」を楽しみに待ちたい。

(M.N)

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