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サンマの味

この一両日、夜間や朝が急に涼しく感じられるようになった。
猛暑続きで少々の暑さなら心地よく感じられる
というわけでもあるまい。季節は正直だと実感する。

胃袋を刺激する季節の到来でもある。
真っ先に思い浮かぶのは、サンマだ。
サンマは秋風に乗ってやってくる。
火の上で脂がジュージューと音を立てる。
焼き上がった熱々のサンマにしょう油と大根おろし
それにスダチなどの汁でも加えれば最高だ。

昔は七輪で焼くのが一般的だった。うちわでパタパタやりながら焼く
そのにおいは路地裏から路地裏へと流れたことだろう。
サンマの味は庶民の暮らしそのものでもあった。

しかし密閉性の高い今の住宅事情では、もうもうとする煙や
あのにおいは敬遠されがちだ。台所の煙対策は進んでいるが
夕方の住宅街で食欲をそそる、あのにおいをかぐことも
少なくなったように思う。

庶民の味と言いながら、以前ほど庶民の暮らしに
とけ込んでいないのかもしれない。
きのう、そのサンマ漁船が一日だけ全国で一斉に休漁した。
燃料高騰による採算悪化の窮状を国に訴え
対策の早期実施を促すのだという。

豊漁のため、価格を調整する意味合いがあるとの見方もあるが
漁業者は「消費が増えないと漁が続けられない」。との意見だ。
脂ののったサンマは文句なく旨い。
庶民から遠のいているとしたらあまりにももったいないと思う。

(M.N)

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