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セミの一生

突然始まる「シャアシャア・・・」。
目をこすり、時計を見ると、まだ五時過ぎ。
鳴き声につられるように気温も上がり、寝付かれず起きてしまう。
このところそんな朝が続く。声の主はクマゼミだ。

ヒートアイランド現象で都市部のクマゼミが増えているらしい。
公園や並木に使われている樹木がケヤキやプラタナスなどが増え
クマゼミが好むから街の中にクマゼミの声を耳にする場面が
相対的に増えたようだ。

よく知られるように、セミの幼虫は地中で何年も過ごすが
地上の寿命は二、三週間しかない。
脱皮の途中で力尽きるのもいる。短い一生だ。
数年を地中で暮らし、最後のひと夏にはい出てくる。
盛夏の大合唱に久々の情眠を破られることがないでもない。
しかし、あと何日かの命を削るかのように鳴いているさまを思えば
切なさに加え、生きるものが負うはかなさも募りくる。

人の来し方行く末についてハットとさせられる問いに出合った。
一生を二十四時間に例えると、あなたの今は何時ごろですか?
年単位では考えにくくても、時間で見ると身につまされる。
残された時間に長短はあれ、この一瞬一瞬を大切にという教えのようでもある。

地球は、人間のわがままのし放題に
懐の深い大地もさすがにいたたまれなくなり、寿命も縮っている。
温暖化をそんなふうに言い表すこともできるだろう。

自然を敬い、すべての生きものが共生する。
古来から受け継ぎ、今も息づく心根である。
セミの一生に気持ちが揺れ動くゆえんだ。
同時に地球を食い物にしてきた結果が温暖化だとすれば
いま一度立ち返り、かみしめたい教えでもある。 

(M.N)

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